クリティカル・アクション:2030年の目標を達成するには?

この特集ページでは、世界保健機関が公表している「NTDsロードマップ(2021-2030年)」の原稿より、重要な部分を日本語に訳したうえで紹介します。現在、世界保健総会における承認前の原稿が公開されており、今後、内容が変わる可能性もあります。

NTDsロードマップでは、疾病ごとに設定された目標を2030年までに達成するために重要となるアクションをまとめています。JAGntd事務局では、これらのアクションを特徴ごとに7つのグループに色分けしました。今後のNTDs対策を効果的に進めるうえで何が必要とされているか、下表が参考となることでしょう。表に関してご質問やご相談などある場合は、JAGntd事務局までお問い合わせください。

なお、対策目標の詳細についてはこちらのページ(作成中)を、診断法開発ニーズについてはこちらの別表(作成中)をご覧ください。

色分けの意味

新しい技術や製品の研究・開発   製品などの供給・アクセス確保   予防・診断・治療に関わる知識・基準などの開発・更新   訓練・能力強化   マッピング、サーベイランスなどの開発・強化   介入プログラムの設計、開始、規模拡大、評価   アドボカシー、資源確保

2030年までに求められているアクションは何か?

アクション1アクション2アクション3
ターゲット:撲滅
ギニア虫症動物の感染を消滅させるためのプロトコルを開発する。アンゴラで感染が起きた理由を調査し、適切な対応を取る。コンゴ民主共和国とスーダンで認定プロセスを始める
トレポネーマ感染症感染状況が不明な国も含め、監視を強化する。他のプログラムなどへの効果的・効率的な統合を図る。資金とアドボカシーを増やし、集団投薬プログラムや皮膚関連NTDsにおける優先順位を上げる。
ターゲット:制圧(感染の中断)
西アフリカ睡眠病(ガンビアトリパノソーマ)保健システム末端に対策・監視活動を統合させる、制圧後の定点監視を準備する。資源動員キャンペーンを含め、長期的な資金計画を作成する。保健当局や首脳へのアドボカシーを通して、蔓延国のオーナーシップを強化する。
ハンセン病暴露後予防のためのリファンピシンの単回投与を各国のガイドラインに含め、新しい予防アプローチの研究を進める。●診断法開発への投資を継続する。感染者発見と治療のための戦略、システム、ガイドラインを開発する。制圧を検証するための資源を確保する。多剤併用療法、リファンピシン単回投与、第二選択薬、副反応の治療薬の供給を確保する。有害事象と耐性を監視する。
河川盲目症マッピングをした後にすべての蔓延国で集団投薬を開始し、現行の集団投薬プログラムを改善し、適切な場合は代替戦略を実行に移す。マッピングと感染の制圧を判断するためのより良い診断法を開発する、ロア糸状虫の診断戦略を改善する、昆虫学的診断および検査室診断を行う能力を高める。感染中断を早めるため、殺フィラリア成虫剤や診断法を開発する、症例管理戦略をデザインする、ロア糸状虫がまん延する河川盲目症の低流行地における制圧戦略を開発し実行する。
ターゲット:公衆衛生上の問題としての制圧
シャーガス病各国政府にシャーガス病が公衆衛生上の問題であると認識してもらうのためのアドボカシーを行い、すべての罹患地域で予防、対策、治療、監視を確立する。現役の医療従事者の訓練や保健サービスの全レベルでの訓練を通して、シャーガス病医療を改善する。家屋内の媒介虫感染が確認されている国が予防、対策、監視を遵守する。
東アフリカ睡眠病(ローデシアトリパノソーマ)現場で使える感染者の発見ツール(迅速診断法など)および安全で効果的な治療法を開発する。対策と監視を国の保健システムに統合し、保健スタッフの訓練などによる能力強化を図る。媒介虫対策と動物の感染管理を国家、関係者、他セクター(観光、野生動物)などで調整し、相乗効果を高める。
リーシュマニア症(内臓型)能動的な症例発見など、迅速な治療を可能にするため感染者を早期に発見できるようにする。特にアウトブレイクが起きたときや、感染者の5-7割を占める子供や若者に対し、迅速な治療へのアクセスを可能するため、薬の供給を確保する。特に東アジアにおける内臓型リーシュマニア症とカラ・アザール後皮膚リーシュマニア症に対して効果的かつ使いやすい治療法と診断法を開発する。
リンパ系フィラリア症集団投薬をすべての感染地域で開始する。適切な場合は、介入法を改善し、実施する(例:3剤治療法、ホットスポットでの戦略)。疾病管理と障害予防の能力を向上させる、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの一環としてプライマリ・ヘルス・ケアでの優先度を上げる。診断法を改善する、集団投薬を止める基準を強化する、集団投薬後および制圧を検証した後の監視基準を制定する、新しいツールや戦略を取り入れたガイドラインを改訂する。
狂犬病狂犬病ワクチンと免疫グロブリンの需要予測を改善し、保健施設への供給を確かにする。暴露後予防薬と犬ワクチンへの適時のアクセスを確保する。各国における保健従事者の能力(例:暴露評価、診断、暴露後予防薬の投与)および犬の管理能力(集団ワクチン投与)を向上する。狂犬病の監視を強化、制度化する、データを入手可能にするため各国による報告遵守を改善する。
住血吸虫症罹病率を測るための指標を定義する。必要とするすべての人々に集団投薬を広げ、必要な薬へのアクセスを確保する。ガイドラインを更新し、媒介貝の対策をする、マッピングとターゲティングを続ける。標準化されたポイント・オブ・ケア診断法など診断テストを開発する。プラジカンテルに変わる薬剤や媒介貝対策の新しい介入法を開発する。
土壌伝播寄生虫症蔓延国から持続的に資金調達できるように政治的コミットメントを増やす。治療効果を改善し、薬剤耐性に対処するため、さらに効果的な治療薬や多剤併用法を開発する。治療の対象を決め、薬剤耐性をモニタリングするため、監視やマッピングシステムを開発する。
トラコーマ質の高い手術へのアクセスを改善し、術後の結果を追跡する。トラコーマによる睫毛乱生症を即座に管理する(2019年に約2.5億人)。特に顔の清潔さと環境改善により感染伝播を減少させることに関して、研究により知識を向上し、パートナーシップを拡大する。制圧検証後に重要となる、感染の再発を見つけ、モニタリングするための効率的で費用対効果の高い方法を開発する。
ターゲット:対策
ブルーリ潰瘍疾病を臨床学的に診断し治療するため保健従事者の能力向上および、早期の治療のため症例を発見、照会するためコミュニティー・ヘルス・ワーカーの能力向上を図る。また、皮膚関連NTDsへの統合を促進する。早期の診断を可能にし、罹病率を下げ、症例を確認するために、保健所やコミュニティー・センターで使える診断ツールを開発する。複数のNTDsが蔓延する地域における局所的なマッピングなどを通し、症例の発見を改善するために、すべての蔓延国で監視システムを作る。
デング熱・チクングニア熱すべてのリスク集団のために予防的ワクチンを開発する。媒介蚊対策の効果についてエビデンスを強化する。蚊の生息地を少なくするため、環境や工学分野と協働する。
包虫症(エキノコックス症)ベースラインデータを構築するために有病割合をマッピングし、国レベルの監視を強化する。効果的な予防と対策の戦略ガイドラインを開発し、それを実行に移す。超音波診断と効果的な介入法の実践を強化し、治療薬アルベンダゾルへのアクセスを確保する。
食物媒介吸虫類感染症感染に関係する環境要因を含めた正確な監視とマッピングツールを開発する。プラジカンテルの寄付を確保する(対策に必要な錠数を推定したのち)集団投薬、水と衛生、ワン・ヘルス的介入の気づきと応用を促進する。効果を評価し、それを保健従事者の訓練に使う。
リーシュマニア症 (皮膚型)保健センターで簡便に使える経口治療薬や局所治療薬の開発とスケールアップ。症例発見のための迅速診断テストの購買可能性と感度および、治療薬の入手可能性を改善する。監視を改善して疾病負荷を推計する、対策介入効果をモニタリングするため患者データベースを構築する。
マイセトーマ(菌腫)、黒色分芽菌症および深在性真菌症迅速診断テストと効果的な治療薬を開発し、症例発見と報告のための監視を構築する。診断と治療のためのフィールドマニュアルを開発し、保健従事者を訓練する。購買可能な診断薬・治療薬へのアクセスを提供する、
疥癬とその他の外部寄生虫疾病負荷を推計するため、蔓延国でマッピングをするための手引書とツールを開発する。集団投薬を実施するための手引書を開発する。アドボカシーと資金投入計画を作る、イベルメクチンと局所治療薬の財源を確保する、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジへ含めることについてアドボカシーをする。
毒蛇咬傷蛇咬傷の管理について医師の訓練を改善する、予防と治療についてコミュニティーの意識を高める。解毒剤の質を改善し、新しい製品の研究開発に投資する。質が保証された製品の製造能力を強化し、農村部での入手可能性を確保する。
条虫症/のう虫症資源の限られた状況で対策プログラムを評価するために処理能力の高いテストを開発し、蔓延地域をマッピングする。感染度が高い地域で的を絞った介入を行う。疾病対策の優先度を上げるため、世界保健機関、国連食糧農業機関、国際獣疫事務局からのアドボカシーを増やす。

出典:WHO NTDs Roadmap (Draft (February 2020), p.16-17)