金額で見る日本の貢献【Japan NTD Tracker】

このJapan NTD Trackerでは、日本が世界のNTDs対策に貢献するために支出している金額をまとめています。

サマリー

  • 2010-2019年の貢献額は計150億円以上である。
  • GHIT Fundによる医薬品研究開発への投資が、日本からの支出の大部分を占める。
  • 日本の支出は研究分野に集中している。非研究分野への支出は、JICAによる技術協力やESPENへの拠出などごく一部に限られる。
  • JICAによる技術協力は先細りになっており、近年ではSATREPSによる研究協力に軸足が移っている。

Japan NTD Trackerがモニタリングの対象とする団体やプログラムの詳細は、以下の通りです。ここに挙げた他にも、国内の研究機関が政府の研究助成金を受けて多数のNTDs関連研究を実施していますが、割愛しています。

国際協力機構(Japan International Cooperation Agency: JICA)

外務省が管轄する独立行政法人で、日本の政府開発援助の実施機関。途上国の社会経済開発のために様々な協力事業を行っている。

JICAによる技術協力(総額実績が2億円以上のプロジェクト、SATREPS案件は除く)、無償資金協力、草の根技術協力事業のうち、NTDs対策を主な目的として2010年以降に実施されたプロジェクトを掲載した。2010年以降、NTDsに関連する有償資金協力事業は確認されていない。

JICAは年度毎の予算額を公表していないため、各プロジェクトの終了時評価あるいは事前評価報告書に示されている総事業費をプロジェクト期間(月数)で等分し、各年度に割り当てた。また、事前評価報告書に示された総事業費は概算額であり、実績額と異なる可能性がある。

JICAの運営管理費は含まれていない。

JICAが実施している海外協力隊派遣、民間連携、総額実績が2億円未満の技術協力事業にも、NTDsに関わる事業が含まれていると考えられるが、協力金額を確認できるデータベースがないため、ここでは割愛した。

笹川保健財団(Sasakawa Health Foundation)のハンセン病対策事業

笹川保健財団は世界中でハンセン病対策を支援している。

グローバルヘルス技術振興基金(Global Health Innovative Technology Fund: GHIT Fund)

日本政府(外務省および厚生労働省)、日本の製薬企業、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカム・トラストが共同出資する公益社団法人。マラリア・結核・NTDsの医薬品研究開発に対して、2013年より投資を行う。

GHIT FundがNTDsの医薬品・ワクチン・診断薬の研究開発プロジェクト(2020年12月までに計35件)に投資した金額の合計を示す。

GHIT Fundの運営管理費は含まれていない。

通常、プロジェクトは複数年にわたって実施されるが、上記の表では、各プロジェクトへの投資総額を受領年に割り当てている。

日本政府からの拠出金は、国連開発計画(UNDP)を経由しており、その一部は「新規医療技術のアクセスと提供に関するパートナーシップ(Access and Delivery Partnership:ADP)」の運営に充てられているが、上記の表には含まれていない。

日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development: AMED)による「アフリカにおけるNTDs対策のための国際共同研究プログラム」

AMEDは内閣府、文部科学省、厚生労働省、経済産業省が管轄する国立研究開発法人で、2015年に設立された。AMEDが手がける多数の医療研究支援プログラムのうち、ここでは「アフリカにおけるNTDs対策のための国際共同研究プログラム」による助成額のみを算入した。このプログラムは、2015年のグローバル・リサーチ・カウンシルにおいて、安倍総理(当時)がアフリカのNTDsに焦点を当てた国際共同研究を立ち上げることを表明したことを受けて創設された。NTDsの予防、診断、創薬、治療法の開発等を行い、成果の社会実装を目指すとともに、共同研究を通じてアフリカの若手研究者の人材育成を行うことを目的とし、文部科学省からの交付金で運営されている。

本プログラムでは、2020年末までに、4件の研究プロジェクトを採択した(3件は2015-2019年度、1件は2018-2021年度)。

上記の表は、各プロジェクトへの配分額を年度毎に示している。

AMEDの運営管理費は含まれていない。

AMEDには、本プログラム以外にもNTDsに関連する研究に使われているプログラムがあるが、ここでは割愛した。

地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development: SATREPS)

SATREPSは、地球規模課題の解決を目指して開発途上国との共同研究を推進する日本政府の事業。SATREPSの感染症分野はもともと国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)とJICAが共同で運営していたが、2015年にAMEDとJICAの共同運営へと移管した。ここでは、移管後のSATREPS感染症分野においてNTDsを対象に含める研究プロジェクトへの日本側協力額を算入した。

上記の表には、AMED移管後に実施されたSATREPS案件のうち、NTDsに関連のある案件への助成額を掲載している。

一部の案件は、NTDs以外の疾患も研究対象としているが、ここではプロジェクト総額をNTDsへの貢献額として計上した。

AMED設立以前のSATREPS事業に関しては、JSTが助成額を公表していないため、2014年以前の金額は算入していない。

JICAは年度毎の予算額を公表していないため、各プロジェクトの終了時評価あるいは事前評価報告書に示されている総事業費をプロジェクト期間(月数)で等分し、各年度に割り当てた。また、事前評価報告書に示された総事業費は概算額であり、実績額と異なる可能性がある。

AMEDおよびJICAの運営管理費は含まれていない。

Expanded Special Project for Elimination of Neglected Tropical Diseases (ESPEN)への政府拠出

ESPENはWHOアフリカ地域事務所が管轄するプロジェクトで、アフリカ52カ国のNTDs集団投薬プログラムを支援している。日本政府は、2019年度よりESPENに対して拠出しており、これを算入した。

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