日本にもあるNTDs:疥癬(かいせん)患者さんの体験談

疥癬(かいせん)は、ヒゼンダニに感染することで起こる伝染性の皮膚病で、強い痒みを伴います。「角化型疥癬」と呼ばれる重症型になると、皮膚に住みつくダニの数が桁違いに多く、感染力も高まります。以下は、日本在住の疥癬患者さんの手記および主治医のコメントをJAGntd事務局で編集したものです。手記は2021年11月に書かれました。

先に症状が出たのは、私(患者)の妻でした。体中に湿疹ができ、内科で処方された塗り薬を使っていましたが、症状がぶり返す日々が半年以上続きました。妻が体中を掻きむしるようになり、ある日、妻がお世話になっているデイサービスの方に、疥癬を疑われました。近くの皮膚科の先生から、さらに疥癬に詳しい先生を紹介していただき、夫婦そろって伺いました。私は通常疥癬、妻は角化型疥癬と診断されました。

私はこの病気を知らなかったので、塗り薬で治るだろうと軽く受け止めました。しかしダニが原因と聞いてから、とても怖くなりました。私は、夜寝ると30分から1時間くらいはかゆくてかゆくて、つらかったです。主治医の先生が「この病気はつらいが必ず治るから心配しないで」、「ダニは人から離れると2-3日以上は生きられません」と教えてくださり、これが心の支えとなりました。

診断後、すぐに治療が始まりました。イベルメクチンという薬を週1回飲みました。当時、新型コロナウィルスの影響で、イベルメクチンは入手が難しくなっていたらしいのですが、先生が手配してくれました。塗り薬を全身につける治療もしました。8週間ほど治療を続けて、妻も私もダニが見つからなくなりました。私のかゆみは楽になりましたが、妻はダニがいなくなった後も1カ月以上も掻いていました。認知症の妻は爪を立て血が出るまで掻くので、その傷がカサブタになり、それも痒いようでした。

治療中は仕事も休みました。疥癬のためデイサービスを利用することができなくなった妻を、自宅に一人で置いておくことができなかったからです。毎日の洗濯が、とにかく大変でした。洗濯物はビニール袋に入れてダニを殺す薬品を散布し、袋の口をしめて1時間待ちます。そのあと60度の熱風殺菌で洗濯します。掃除をするときはフローリングや畳の上もコロコロをして、掃除機をかけ、そのあとで雑巾がけをしました。

買い物の際も、ダニをうつさないように気を使いました。食品など最小限使うものだけ買い、買わない品物は触らず、なるべく滞在時間を短くするようにしました。毎月通っている病院には、疥癬に感染しましたと電話し、病院の前で待って処方箋を出してもらい、そこで会計もしました。薬局でも同じようにして、薬局の前で薬をもらい、会計をしました。

先生から「もうダニはいませんよ」と言われてもまだ心配で、さらに2回診察を受けて「これで治りました」と言われるまでは、このような生活を続けました。

 

主治医のコメント

疥癬への対応は「ヒゼンダニの駆虫」と「感染拡大予防」が基本で、角化型疥癬の場合は隔離が必要です。今回、角化型と診断された患者さん(「妻」)は、デイサービスの方々からは隔離できましたが、介護者であるご主人からは隔離できませんでした。約2週間の治療で駆虫が進み、角化型疥癬から通常疥癬になった時点で、徹底した洗濯・掃除や他人との接触回避といった対応は解除としました。ただ、その時点ではまだ痒みも強く、患者さんはご心配で角化型の対応の解除に踏み切れなかったようです。疥癬は他の皮膚病との見分けがつきにくい皮膚病で、角化型疥癬になる前に治療を始めることが大切です。「この痒さはふつうじゃない」「なんだかみんなが痒くなってきた」ことに気づいたら、早めに皮膚科専門医にご相談ください。